腕時計
母と外出すると
「あ、時計忘れてきた」
と言います。
いつも、目立つところに置いてあるので、出かける前に
「時計しなくていいの?」と促します。
「見ないからいいの」と言います。
それでも、家を出てしばらくすると
「あ、時計忘れてきた」
ということになります。
「あの時計は、銀行にお勤めしてた時に買ったの」
「そんなことないよ、ここ10年ぐらいに買ったものでしょ」
「違う。時計は一回しか買ったことない」
「60年前の時計じゃないよ。電池式だもん」
と、私もムキになることないのに、不毛なやりとりが続きます。
父が母にプレゼントした高級時計や、
私が母に買ってあげた時計のことを全く思い出さない、
そして、お勤めして最初に買った時計の記憶だけが残っていることに、
ちょっと嫉妬心がわくのだと思います…。